行政書士とは

行政書士の廃業率と実態【実例あり】

行政書士で独立開業したものの、志半ばで廃業していく行政書士も一定数います。
独立開業した全員が必ず成功するとは限りません。

行政書士の廃業率は9割

ネットではこのような情報も見かけますが、実際のところはどうなのでしょうか?

本記事では、現役の行政書士が行政書士の廃業について解説します。

この記事を書いた人
行政書士ヤマハチ 現役行政書士
30歳で行政書士事務所開業
1年目の売上16,500円という絶望から、開業3年目で売上1,800万円達成

行政書士の廃業率の現状

「行政書士の廃業率9割」に関する明確な根拠となる情報見当たりませんでした

しかし、総務省が令和3年度の行政書士登録状況について公表しております。

参照:総務省|行政書士制度|【表1】行政書士の登録状況(令和3年度)

元の資料だと少しわかりにくいので、見やすくしたバージョンがこちらです。

令和3年度試験合格者のみ全体
年度当初の登録者(①)35,535名49,480名
新規の登録者1,863名2,687名
廃業届の提出者(②)995名1,576名
廃業率(② ÷ ① × 100)2.8%3.2%
行政書士の登録状況(令和3年度)より一部抜粋

以上のことから、行政書士の廃業率が9割ではないことがわかります。

直近の行政書士廃業について

行政書士登録をすると、日行連(日本行政書士会連合会)から毎月届く「日本行政」という会報冊子に、月次の全国の行政書士登録状況について掲載されております。

月次新規登録者廃業による登録抹消
2024年1月188名139名
2月139名148名
3月204名544名
4月487名183名
5月378名150名
6月405名124名
7月355名158名
8月277名157名
9月238名192名
10月198名142名
11月211名113名
12月222名207名
2025年1月163名149名
参照:「日本行政」会報|令和7年度の行政書士登録状況 過去1年分

行政書士が廃業してしまう理由

行政書士が廃業しやすい理由、いわゆる食っていけない理由として、以下のような理由をよく見かけます。

  • 単発業務だから継続的な売上にならない…
  • 単価が安い…
  • そもそも行政書士資格だけでは食っていけない…  等々

個人的な意見としては、どれも本質的な理由ではなく、最大の要因はシンプルに「集客力の不足」だと思います

実際、集客に関する知識も経験も皆無だった開業当初の私は、問合せ0件&売上0円が7か月間も続きました

一応、WEBサイトは公開しておりましたが、アクセス数は月に30件程度。

当時は集客のことよりも、相談対応や依頼業務に備えて実務の勉強にばかり注力し、結果として、開業1年目にして「廃業」の2文字がちらつき始めました。

廃業寸前まで追い込まれるまで私の頭の中は、

WEBサイトを制作すれば、いずれ問い合わせが来るだろう!
交流会等に沢山参加して名刺を配っていれば、いずれ仕事を紹介して貰えるだろう!

と言う短絡的な考えだったため、現実はそんなに甘くないことを思い知らされました。

私のように遠回りしないためにも、開業前に必ず「集客方法」に関する具体的な施策と行動プランを作成すべきです

集客方法の例
  • WEB集客
  • SNS集客
  • YouTube集客
  • 飛び込み営業
  • ポスティング
  • セミナー開催
  • 交流会等への参加
  • 親族や友人たちへの開業挨拶

自身の取り扱う専門分野、顧客ターゲット、開業エリア、競合他社の状況、必要予算などを考慮して最善の集客方法を1つか2つに絞って取り組みましょう。

全て実施しようとすると結局、どれも中途半端になってしまいます。

私は完全にWEB 集客にフルコミットし、行政書士試験の勉強並みにWEBマーケティングに関する勉強をしました。

既存の人脈でガンガン仕事を取ってこられる見込みがある方等は別ですが。

そうでない方は、WEB集客に向けたサイト制作の知識、WEBサイトで集客するためのセオリー、広告運用の仕方を徹底的に学ぶことをオススメします。

廃業した行政書士の実例

私が知っている、実際に廃業してしまった行政書士の実例をご紹介します。

※一部フィクションを交えております

【実例①】資金ショートに陥ったAさん

  • 3年かけて独学で行政書士試験突破
  • 家族の了承を得て実家(戸建)で事務所登録&開業
  • 行政書士登録費用と当面の運転資金、生活資金を合わせて80万円でスタート
  • 開業後、知人経由で数件の仕事を受任したものの、月間売上が数万円程
  • 1年後、経営難により廃業を決断
  • 以前の職場に再就職

行政書士は開業費用、固定費を抑えて開業が可能ではありますが、最低でも開業資金とは別に1年分の運転資金1年分の生活費を確保しておいた方が良いです。

項目詳細
開業資金60~90万円(行政書士登録費用約30万円 + 備品購入等)
運転資金(1年分)120万円(固定費が月10万円を想定)
生活費(1年分)180万円(生活費が月15万円を想定)
合計360~390万円
開業資金の例

【実例②】集客より実務習得の勉強を専念したBさん

  • 派遣社員(コールスタッフ)
  • 行政書士試験に合格した1年後に、一念発起して独立開業を決意
  • 様々な研修や有料セミナーに積極的に参加
  • 紹介による仕事が数件あったものの、経営難により1年半後に廃業

業務未経験で独立開業した方の典型例だと個人的には思います。

業務知識を習得することに専念するあまり、肝心な集客や営業活動を蔑ろにしてしまい、本末転倒になってしまったパターンです。

業務知識の習得も大切ですが、それ以上に集客に向けた行動が大切だと言うことです。

詳しくはこちらの記事「実務の勉強に注力しすぎない」をご覧ください。

独立開業を目指す方は「廃業率」は気にしなくていい!

  • 行政書士を目指して、試験勉強に取り組んでいる方
  • 行政書士資格を活かして独立開業に挑戦しようか検討している方

そのような方々は、行政書士の廃業率なんて気にしないで下さい

そもそも行政書士の廃業率が高いと主張する方は、以下のような方だと私は予想しています。

完全に個人の感想です。
  • 不安を煽りセミナー、情報商材、コンサルティング等への購入に繋げたい一部の業者
  • 行政書士試験に合格できずに挫折した方
  • 実際に廃業してしまった方

実際に行政書士の廃業率が9割という根拠はどこにも見当たりませんので、独立開業を目指す方は、そういった雑音など気にしないで欲しいです。

確かに一定数、廃業してしまう方がいるのは事実ですが、それは行政書士だけに限った話ではありません。

行政書士試験が「合格率10%」と知ったときに、

難しそう…

とやる前から諦めたでしょうか。

勉強して絶対合格しよう!

と、一心不乱に勉強したはずです。

もしくは、今も必死に勉強しているはず。

大切なのは合格率や廃業率などの周囲の意見や情報に惑わされることなく、行政書士として売上を上げるために「何をすべきか?」を明確にし、着実に実行していく姿勢だと思います。

まとめ

ネットで噂されるほど、行政書士の廃業率は高くありません。

とは言っても、毎月100名近くの行政書士が廃業していることも事実です。

早期での廃業をしないためには、十分な運転資金と集客に必要な知識と計画をしっかり立てて独立開業に踏み切りましょう。