行政書士に興味はあるけど、どの年齢層が多いんだろう?
今から行政書士を目指すのは早い?遅い?
そんな疑問を解決すべく、現役行政書士が行政書士の平均年齢について解説していきます。
行政書士の平均年齢

日本行政書士会連合会が2024年に発行した「月間日本行政3月号」によると、下記のような調査結果となっております。
年齢層 | 人数 | 割合(R5) | 割合(H30) |
---|---|---|---|
18~30歳 | 42人 | 1.40% | 0.80% |
31~40歳 | 309人 | 10.00% | 8.00% |
41~50歳 | 752人 | 24.40% | 17.30% |
51~60歳 | 782人 | 25.40% | 17.90% |
61~70歳 | 793人 | 25.70% | 35.60% |
71歳以上 | 387人 | 12.50% | 19.90% |
未回答 | 19人 | 0.60% | 0.50% |
合計 | 3,084人 | 100% | 100% |
行政書士全体の63.6%が51歳以上という、高齢化の進んでいる業界であることがわかります。
18~40歳の行政書士はたったの11.4%
行政書士全体のうち3,084人(全体の約6%)しか回答していないアンケートなので、正確な数字ではないようにも思えますが、概ね正しい数字だと思います。
実際に、私が行政書士事務所を開業してから出会った先輩行政書士や、同期の行政書士を見てみると、40〜50代の方が多い印象です。
行政書士試験の年齢層

年齢別 各年度の行政書士試験 受験・合格者数
年齢 | 年度 | 受験者 | 合格者 |
---|---|---|---|
10代 | 令和4年度 | 570 | 56 |
令和5年度 | 573 | 47 | |
令和6年度 | 715 | 76 | |
20代 | 令和4年度 | 7,810 | 1,178 |
令和5年度 | 7,599 | 1,286 | |
令和6年度 | 7,731 | 1,293 | |
30代 | 令和4年度 | 10,117 | 1,611 |
令和5年度 | 9,491 | 1,693 | |
令和6年度 | 9,537 | 1,595 | |
40代 | 令和4年度 | 12,430 | 1,513 |
令和5年度 | 11,954 | 1,736 | |
令和6年度 | 11,875 | 1,564 | |
50代 | 令和4年度 | 11,138 | 1,058 |
令和5年度 | 11,311 | 1,295 | |
令和6年度 | 11,643 | 1,175 | |
60代以上 | 令和4年度 | 5,785 | 386 |
令和5年度 | 6,063 | 514 | |
令和6年度 | 6,284 | 462 | |
合計 | 令和4年度 | 47,850 | 5,802 |
令和5年度 | 46,991 | 6,571 | |
令和6年度 | 47,785 | 6,165 |
令和6年度試験結果分析資料-受験者(47,785人)

行政書士試験の受験者は30〜50代の方が多いことがわかります。
行政書士試験の合格率と難易度分析

年齢別 各年度の行政書士試験 合格率
年齢 | 年度 | 合格率 |
---|---|---|
10代 | 令和4年度 | 9.82% |
令和5年度 | 8.20% | |
令和6年度 | 10.63% | |
20代 | 令和4年度 | 15.08% |
令和5年度 | 16.92% | |
令和6年度 | 16.72% | |
30代 | 令和4年度 | 15.92% |
令和5年度 | 17.84% | |
令和6年度 | 16.72% | |
40代 | 令和4年度 | 12.17% |
令和5年度 | 14.52% | |
令和6年度 | 13.17% | |
50代 | 令和4年度 | 9.50% |
令和5年度 | 11.45% | |
令和6年度 | 10.09% | |
60代以上 | 令和4年度 | 6.67% |
令和5年度 | 8.48% | |
令和6年度 | 7.35% | |
合計 | 令和4年度 | 12.13% |
令和5年度 | 13.98% | |
令和6年度 | 12.90% |
年代別に見ると、20〜30代の合格率が高く、50〜60代の合格率が低いことがわかります。
全体で見ても平均合格率が約10%と難易度の高い試験です。
行政書士の高齢化が進む要因

行政書士の高齢化が進む要因は大きく3つあると考えられます。
- 公務員OBから行政書士登録する方が一定数いる
- 資格を取得しただけで登録しない方が多い
- 行政書士には定年がない
1.公務員OBから行政書士登録する方が一定数いる
公務員としての勤務経験が17年(または20年)以上あると、試験に合格せずとも行政書士登録が可能です。
つまり、早期退職後のセカンドキャリアとして、行政書士事務所を開業される公務員OBが存在するため、少なくとも40代以上の行政書士が毎年増加していくことがわかります。
2.資格を取得しただけで登録しない方が多い
行政書士資格を取得しただけで、行政書士登録をしない方もいます。
前述の行政書士試験の年齢層からわかる通り、20〜30代の受験者から毎年2,500人程度の合格者が出ていますが、合格者全員が行政書士登録をするわけではありません。
理由として、行政書士試験の受験目的にあります。
- 司法試験を目指す法学部の大学生が腕試しに挑戦している
- 社会人が自己啓発の一環で挑戦している
- 難関資格へのステップアップとして、行政書士資格に挑戦している
このような受験目的の方は、そもそも行政書士としてのキャリアを想定していないため、資格取得後に行政書士登録をしないのです。
3.行政書士には定年がない
そして、個人開業事務所を営む行政書士には定年がありません。
雇用されている立場ではないため、自分自身で行政書士の引退(廃業)を決断しない限り、行政書士としての活動が行えます。
実際に、ご高齢の行政書士の中には、行政書士事務所の看板を掲げているものの、実態としては行政書士業務ほとんどしていない方もいらっしゃいます。
行政書士合格後のキャリア

行政書士試験合格後の選択肢
試験合格後、行政書士資格を活かす働き方としては、
- 行政書士事務所を開業する(個人開業の行政書士)
- 行政書士事務所へ転職する(使用人行政書士)
のいずれかが多いかと思います。
よく、行政書士取得後のキャリアに「一般企業の法務部へ就職」も選択肢として挙げられますが、かなり厳しいと思います。
なぜなら、行政書士資格が法務部の仕事に活かせるとは言い難いからです。
法務部の仕事は、いわゆる契約書の作成や確認、コンプライアンス(法令順守)整備等がメインとなりますが、あえて厳しい言い方をすると、
行政書士試験に合格しただけの方が、すぐに企業の契約書を作成できるか?
ということです。
仮に私が法務部の社員を採用するなら、行政書士資格の有無よりも、実務経験やこれまでの職歴を重視すると思います。
行政書士資格を活かして、一般企業の法務部に転職することを検討している方は、多少有利になるかもしれない程度と考えておきましょう。
行政書士の4つの属性
行政書士と一言で言っても、実は、自身の該当する立場によって4つの属性に分類されます。
属性 | 備考 |
---|---|
1.個人開業の行政書士 | 個人事務所を開業している行政書士 |
2.個人事務所の使用人行政書士 | 個人事務所の行政書士に雇用されている行政書士 |
3.行政書士法人社員 | 行政書士法人の社員(=役員)に就任している行政書士 |
4.行政書士法人の使用人行政書士 | 行政書士法人に雇用されている行政書士 |
行政書士登録者数(令和6年11月末日)
属性 | 合計 | 男性 | 女性 |
---|---|---|---|
1.個人開業の行政書士 | 49,335名 | 41,465名 | 7,870名 |
2.個人事務所の使用人行政書士 | 624名 | 356名 | 268名 |
3.行政書士法人社員 | 2,379名 | 1,972名 | 407名 |
4.行政書士法人の使用人行政書士 | 612名 | 338名 | 274名 |
合計 | 52,950名 | 44,131名 | 8,819名 |
このように、
個人開業で活動する行政書士は全体の約93.2%
と圧倒的に多いことがわかります。
私も個人開業の行政書士に分類されます。
ちなみに、使用人行政書士とは、行政書士事務所に雇用されている行政書士です。
しかし、行政書士資格を取得して、行政書士事務所へ就職できたとしても、必ずしも行政書士登録できるとは限りません。
なぜなら、行政書士登録には約30万円の登録費用と、毎年約72,000円の会費が発生するからです。
行政書士登録はせずとも、行政書士には「補助者登録」という制度も存在し、行政書士の指示・監督のもと、一定範囲の行政書士業務ができるようになります。
就職先の行政書士事務所によって、最初から行政書士登録を行い、使用人行政書士として勤務できる場合もあるでしょうし、最初は補助者として勤務し、ゆくゆく行政書士登録をさせてもらえる場合もあるでしょうし、この点は就職先の行政書士事務所の方針や制度に左右されます。
行政書士法人社員とは
行政書士法人の役員に就任している行政書士のことを意味します。
一般企業のように、行政書士事務所も法人化することが可能です。
行政書士法人の役員は社員と呼ばれ、行政書士しか就任できません。
行政書士の就職事情
結論、行政書士事務所の求人は多くないです。
求人募集があってもパートやアルバイトの求人が多く、正社員の求人件数は少ないです。
とは言っても、東京や大阪などの比較的人口の多い地域では、行政書士事務所の求人はそれなりに多く存在し、正社員の求人募集も多数あります。
行政書士資格を活かして就職や転職を検討する場合は、行政書士事務所の求人だけでなく、
他士業(司法書士、税理士、社会保険労務士、弁護士)事務所の求人もチェック
することをおすすめします。
他士業事務所でも、行政書士資格者を優遇する求人が一定数存在するためです。
ちなみに私が独立開業する前、転職エージェント経由で選考に進んだ行政書士事務所から内定をいただいたことがあります。
悩んだ挙句、私は独立開業の道を選び、内定を辞退しましたが、転職エージェントをうまく活用することで、行政書士資格を活かした転職の可能性も広げられます。
まとめ
行政書士は全体の約半数が61歳以上と、高齢化の進む業界です。
しかし、行政書士としての成功と年齢は関係ありません。
なので、何歳から行政書士試験に挑戦しても、何歳で独立開業しても、早すぎることも、遅すぎることもないです。
年齢にとらわれずに、自分の信じた道を歩んでいきましょう。