「行政書士」って具体的にどんな仕事をしているのかイメージがわかない
という方向けに、現役行政書士の私が、行政書士の仕事内容をまとめてみました。
専門用語や難しい言葉はなるべく使わず、わかりやすい言葉に置き換えながら解説していきます。
行政書士とは

一言でいうと、
お客様からご依頼を受けて書類の作成・提出を遂行する専門家です。
行政書士は、行政書士法(昭和26年2月22日法律第4号)に基づく国家資格者で、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理、遺言書等の権利義務、事実証明及び契約書の作成、行政不服申立て手続代理等を行います。
引用:日本行政書士会連合会
行政書士として活動するには、日本行政書士会連合会(通称:日行連)に登録申請を行い、行政書士登録をする必要があります。
ちなみに、行政書士試験に合格しただけでは「行政書士」と名乗ることも、
行政書士としての活動ができない「有資格者」と呼ばれる立場になります
行政書士の主な仕事内容

官公署に提出する書類などの作成
官公署とは、国や地方公共団体の役所のことを指します。
行政書士の代表的な業務が許認可申請の書類作成です。
- 一定金額以上の建設工事を請けたい(=建設業許可)
- 飲食店を営業したい(=飲食店営業許可)
- 中古品の買取販売をしたい(=古物商営業許可)
- ドローンを使用して撮影したい(=飛行許可)
上記のような、
何かしらの許可を得るために必要な申請書類をお客様に代わって作成・提出するのが、
許認可業務と呼ばれる行政書士の仕事です。
その他にも、遺言書作成、契約書作成、自動車登録手続き等の「権利義務」や「事実証明」に関する書類作成も行政書士の仕事に含まれます。
官公署への提出代行
作成した書類を管轄の役所へ提出することも行政書士の仕事です。
基本的には書類の作成と提出はワンセットと考えておきましょう。
コンサルティング業務
私の個人的な考えではありますが、
行政書士としての価値を一番発揮できるのが、コンサルティング業務だと思います。
書類作成や提出自体は、時間と手間をかければお客様ご自身でも出来ます。
極端なことを言えば、どの行政書士に依頼しても、作成される書類自体に大差はありません。
もちろん、経験と知識が豊富な行政書士の方が、
クオリティの高い書類を作成できるのは事実としてありますが。
だからこそ、ご依頼を受けた書類作成・提出代行を早く完璧に遂行することは大前提として、
「+αの提案」など、お客様の立場になって親身にサポートを行う、コンサルタントとしての立ち回りによって、行政書士としての真価が問われるように思います。
それが将来的に、他事務所との差別化できるポイントになったり、対外的にアピールできる自身の強みにもなります。
行政書士に向いている人

コミュニケーション力がある
様々なお客様への対応が求められる行政書士にとって、コミュニケーション力は必須です。
具体的に言うと「言語化力」と「傾聴力」の2点が、私の経験上かなり重要になります。
言語化力とは、自分の頭の中にある考えや知識を、相手が理解しやすい言葉に変換して伝える力です。
ご相談にいらっしゃるお客様のほとんどは、当然ながら専門的な知識を持っておりません。
行政書士として、お客様が理解しやすい言葉や表現を使ってわかりやすく伝える力が重要となります。
この点を意識するだけでも、「問合せ⇒ご依頼」に繋がる確率(=受任率)がグンと高まります。
実際に「いくつかの事務所へ相談したが、先生の説明が一番わかりやすかった」と、
初回相談の対応が、ご依頼をいただく決め手になったことが何度もあります。
もう一つの傾聴力とは言葉の通り、お客様が話すことを理解する力です。
表面的な理解ではなく、お客様の背景や気持ちの部分まで察することができるかと言うことです。
お客様が抱える「わからないこと」「不安なこと」「望んでいること」等を適切に理解することで、行政書士として最適なご提案やご案内を差し上げることができます。
勉強熱心
行政書士は死ぬまで勉強です。
法改正や業界のことに対して、常にアンテナを張り、最新の知識にアップデートし続ける必要があります。
独立開業をされる方であれば、行政書士の実務だけでなく、経営、マーケティング、税金のことも勉強する必要があります。
細かい作業が得意な人
行政書士のプライドにかけて、作成する書類にミスは許されません。
ご依頼いただく内容によっては100枚近い申請書類を作成することになりますが、それらの書類を全てミスなく仕上げなければなりません。
なので細部まで拘って仕事ができる方や、細かい作業が得意な人は行政書士に向いていると思います。
行政書士の仕事で注意すべき「非弁行為」

行政書士の仕事で注意すべきことが「職域」です。
弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士のように「○○士」と呼ばれる職業には、法律によってそれぞれの職域(業務範囲)が定められています。
簡単に言えば、
資格ごとに「守備範囲」があるので、そこを無視して何でもかんでも依頼を引き受けてはいけないということです。
この職域に関しては、割とお客様は理解していません。
故に「社会保険のことも先生に相談できるの?」や、「不動産の名義変更手続きもお願いできますか?」など、行政書士では扱うことのできない業務についても時々ご相談を受けますが、事情をご説明し、協力関係にある社会保険労務士や司法書士をご紹介することになります。
- 紛争性のある事案や法律相談全般:弁護士の職域
- 登記に関すること:司法書士の職域
- 税金に関すること:税理士の職域
- 社会保険や労務に関すること:社会保険労務士の職域
特に「非弁行為」には注意する必要があります。
弁護士法第72条に抵触する行為を非弁行為と言い、わかりやすく言うと、人の揉め事に行政書士が首を突っ込むようなパターンです。紛争性のある事案については「離婚」や「相続」に関する相談で遭遇します。
例えば、離婚に伴い夫婦間で合意した内容を書面に残す「離婚協議書」の作成はOKです。
しかし、子供の親権や夫婦の財産について話がまとまらないので、行政書士として夫婦間の仲裁に入るような行為や相手方に交渉するような行為は一切NGです。
当然、こういった違反が発覚すると、業務停止処分を受けたり、最悪の場合は除名処分(廃業)を受けますので十分気を付けましょう。
行政書士として扱えないご依頼があった際は、お客様にきちんと説明し、可能であればそのまま然るべき専門家をご紹介してあげるのが理想です。
まとめ
行政書士の主な仕事は、お客様に代わって書類作成や、役所へ書類の提出を代行することです。
それだけに留まらず、お客様のお悩みを解決に導く「コンサルタント」としての役割を発揮するため、
経験と知識を積みながら、より高い専門性を発揮できるようになることが理想的です。
他士業の職域に踏み込まないように、行政書士の業務範囲についても正しく理解しておきましょう。