行政書士とは

試験は不要!?公務員が行政書士になる方法【特認制度の条件】

公務員経験がある方であれば、特認制度によって、行政書士試験を受けることなく行政書士になることも可能です。

特認制度って何か条件があるの?
何人くらいが行政書士になってるの?

と気になる方へ、この記事では「特認制度の条件や手続き方法、注意点」などを現役の行政書士が解説しています。

公務員経験を活かしたセカンドキャリアの参考になれば幸いです。

この記事を書いた人
行政書士ヤマハチ 現役行政書士
30歳で行政書士事務所開業
1年目の売上16,500円という絶望から、開業3年目で売上1,800万円達成

特認制度の条件

一定の公務員歴・行政事務歴が必要

行政書士になることができる方は、行政書士法第2条に定められています。

その中で注目すべきは、公務員歴による行政書士資格について触れている行政書士法第2条6号です。

次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。
一 行政書士試験に合格した者
二 弁護士となる資格を有する者
三 弁理士となる資格を有する者
四 公認会計士となる資格を有する者
五 税理士となる資格を有する者
国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間及び行政執行法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第4項に規定する行政執行法人をいう。以下同じ。)又は特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第2項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員又は職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して20年以上(学校教育法(昭和22年法律第26号)による高等学校を卒業した者その他同法第90条に規定する者にあっては17年以上になる者

行政書士法 第2条

行政書士法第2条6号の内容をまとめると、

・国家公務員または地方公務員
・行政事務を担当した期間が17年以上(中卒なら20年以上)

上記のいずれも満たす方は、行政書士となる資格を持つと定めています。

つまり、一定の公務員歴があれば行政書士試験を受けることなく行政書士になれるということです。

これを特認制度と呼びます。

なお、行政書士試験が免除される理由は、この法律に次のような趣旨があるためです。

行政書士法第2条6号の趣旨
公務員として官公署で行政事務を長期間担当した者は、官公署に提出する書類作成に相当精通していると考えられるため、行政書士試験合格者と同程度の資質を与えても差し支えない

17年以上も行政事務を担当していれば、行政書士の実務にも詳しいと思います。

ただし、特認制度を利用するにあたって、「行政事務」を担当していることが重要になります。

「行政事務」の解釈

行政書士法第2条6号には、「行政事務を担当」という定めがあるため、公務員であれば誰でも特認制度を利用できるわけではありません

行政事務を担当する者であるかどうかは、基本的に次のような基準によります。

行政事務を担当する者と認められる基準
  • 文書の立案作成、審査等に関連する事務であること
    (必ずしも自らの作成は要せず、広く事務執行上の企画等を含む)
  • ある程度その者の責任において事務を処理していること

単に職務の一部に書類作成が含まれるだけでは足りず、その者の職務内容が全体として上記2つの基準を満たすことが必要とされています。

なお、「単なる労務、純粋な技術、単なる事務補助」は、行政事務に含まれないと判断されています。

特認制度を利用した行政書士登録申請

行政書士の登録申請

行政書士となる資格(行政書士法第2条)を持つ方は、行政書士の登録申請を経て、初めて行政書士になることができます。

つまり、

・国家公務員または地方公務員
・行政事務を担当した期間が17年以上(中卒なら20年以上)

と言う方も、行政書士を名乗るためには、行政書士の登録申請が必要です。

行政書士の登録申請については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参考にしてみてください。

特認制度の利用には事前審査がある

特認制度を利用して行政書士登録を希望する場合、行政書士登録申請よりも前に行政書士法第2条6号に該当する者かどうか確認するための事前審査が必要になります。

事前審査では、行政事務を担当する者としての基準を満たすか、行政書士法第2条の2(欠格事由)に該当する者か、などが確認されます。

事前審査が終われば、行政書士の登録申請が可能となります。

必要書類や審査期間などは、各都道府県行政書士会によって異なるため、詳しくは自身が開業する際の事務所所在地を管轄する行政書士会へ問合せましょう。

提出書類例(東京都行政書士会の場合)
  • 行政書士資格事前調査願【必須】
  • 公務員職歴証明書【必須】
  • 証明書(行政書士法第2条の2第4号に該当しないことの証明)【該当者のみ】
    ※ 次のいずれかに該当する場合は提出の必要はありません。
    ○ 退職後3年を経過している場合
    ○ 公務員職歴証明書に退職事由(定年退職、勧奨退職、依願退職)の記載がされている場合

ちなみに、公務員職歴証明書に職務内容の詳細を記載することで、行政事務を担当していたかどうか証明します。

特認制度を検討する際の注意点

公務員のセカンドキャリアとして、特認制度で行政書士になることを検討している方は、いくつか注意が必要です。

必ずしも行政書士になれるわけではない

公務員歴を満たしていたとしても、行政書士になれることが決まったわけではありません。

その理由は、前述のとおり特認制度には事前審査があるためです。

例えば、以下の方なら特認制度を利用できるように見えます。

  • 19歳(高校卒業)から公務員
  • 36歳で退職
  • 行政事務を17年間担当

しかし、万が一、「17年のうち1年は単なる事務補助だった」と事前審査で判断されてしまった場合は特認制度の対象外となります。

また、休職期間等があり通算17年に満たなかった場合も同様です。

やや極端な例を挙げましたが、特認制度を利用できるのは、早くても30代後半、現実的には40代以降になるはずです。

このように、必ずしも事前審査が通るとは限らないため、行政書士で早期開業を目指す方は、行政書士試験に挑戦する方が早くて確実です。

公務員と行政書士は兼業できない

2019年の働き方改革以降、副業OKとする企業が増えてきているため、「平日は会社員、土日は行政書士」という働き方も選択肢の一つにあります。

公務員においては、副業を一部許可する取り組みが見られるようになってきているものの、営利目的の副業が禁止されていることは、今までと変わりません。

つまり、公務員と行政書士を兼業することはできないということです。

特認制度の利用を検討される方は、公務員歴・行政事務歴を十分に積むようにしましょう。

在職中に「行政書士試験合格→行政書士登録」をする際も同様です。

公務員が行政書士として開業するためには退職が前提となります。

特認制度を利用する人数と割合

実際に特認制度を利用した方(行政書士法第2条の第6号=公務員OB)のデータが以下になります。

参照:総務省|行政書士制度|【表1】行政書士の登録状況(令和4年度)
令和4年度第6号(公務員OB)全体
年度当初の登録者数8,293名50,286名
新規登録者数376名2,713名
※令和3年度の新規登録者数(第6号):417名

第6号該当者(376名)は、新規登録者数全体(2,713名)の約13.9(%)を占めるため、行政書士新規登録者の7人に1人は特認制度を利用した公務員OBという計算になります。

なお、新規登録者数の内訳を見ると、第6号(公務員OB)は、第1号(行政書士試験合格者)に次いで、2番目に多いです。

最後に 意外と特認制度の条件は厳しい

以上、特認制度について解説いたしました。

・国家公務員または地方公務員
・行政事務を担当した期間が17年以上(中卒なら20年以上)

上記を満たす方は、特認制度を利用できますが、業務内容が行政事務であることに注意が必要です。

行政事務を担当する者と認められる基準
  • 文書の立案作成、審査等に関連する事務であること
    (必ずしも自らの作成は要せず、広く事務執行上の企画等を含む)
  • ある程度その者の責任において事務を処理していること

各都道府県行政書士会による事前審査をクリアすることができたら、行政書士の登録申請ができ、行政書士を名乗ることができます。

ただし、特認制度を利用するには長期的な計画が必要になります。

今は様々なキャリアに挑戦できる時代ですので、20〜30代で独立開業することは珍しくありません。

行政書士は専門分野によりますが、将来性のある職業だと思います。

その中で競争優位性を確立させるため、業界への早期参入を狙う方は、行政書士試験にチャレンジすることをオススメします。

公務員試験に合格できた方なら、共通点が多い行政書士試験にも合格できると思います。

行政書士試験の概要は、以下の記事にまとめていますので、ご参考になれば幸いです。

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絶対に合格するぞ!と言う方は、参考にしてみてください。