ネットで行政書士に関することを検索すると
行政書士は恥ずかしい
行政書士資格に価値は無い
行政書士は食えない
などなど、ネガティブな情報も散見されます。
果たして本当に
行政書士は恥ずかしい資格なのか?
について、現役行政書士が行政書士資格のリアルを解説していきます。
行政書士が恥ずかしいと言われる理由4選

- 誰でも取れる簡単な資格だから
- 平均年収が低いから
- 将来性が無いから
- 専門性が無いから
1.誰でも取れる簡単な資格だから
行政書士資格は「誰でも取れる簡単な資格」と言われることもありますが、決して簡単な資格ではありません。
あくまで、他士業の資格難易度と比較をしたら、簡単に見えるだけです。
八士業 | 合格率 | 勉強時間 |
---|---|---|
弁護士 | 40〜45% | 5000~8000時間 |
弁理士 | 6〜7% | 2000~3000時間 |
税理士 | 18~20% | 2500~3000時間 |
司法書士 | 4~5% | 3000時間 |
社会保険労務士 | 6~7% | 800~1000時間 |
行政書士 | 10〜12% | 800~1000時間 |
土地家屋調査士 | 8〜9% | 1000〜1500時間 |
海事代理士 | 50〜55% | 500~600時間 |
行政書士とよく比較されがちな司法書士は、毎日5〜8時間の勉強を2〜3年続けて、合格できるかどうかのレベルです。
一方、行政書士は?
私の場合ですと、仕事をしながら1年間ほぼ毎日3〜4時間は勉強しました。
試験1か月前になると週末は朝から晩までずっと勉強して、なんとか合格できました。
このように、超難関資格と比較すると行政書士資格が簡単に見えるだけで、
一般的に見ても行政書士は難関資格の部類に入ります。
決して誰でも取れるような簡単な資格ではありません。
2.平均年収が低いから
厚生労働省の調査によると、行政書士の平均年収は約580万円とあります。
士業 | 平均年収 |
---|---|
弁護士 | 971.4万円 |
弁理士 | 971.4万円 |
税理士 | 746.6万円 |
司法書士 | 971.4万円 |
社会保険労務士 | 780.9万円 |
行政書士 | 579.8万円 |
土地家屋調査士 | 971.4万円 |
他士業と比較すると、確かに年収は低いかもしれませんが、参考程度として捉えておくことをオススメします。
なぜなら、
独立開業した場合、自身の経営次第でいくらでも収入が変動するからです。
私は開業3年目で年商1800万を達成し、そこから事務所の家賃や通信費などを差し引いて、収入が1500万くらいでした。
世の中には、私よりもはるかに稼いでいる行政書士もいます。
行政書士資格を活かし、経営者としてどのように事業展開していくか?を考え抜き、勉強し、行動し続けられる方であれば、年収1000万円は十分狙えます。
3.将来性が無いから
AI(人口知能)の発展によって、行政書士だけでなく多くの仕事が、AIに代替されてしまうと言われています。
しかし、それはまだまだ遠い未来の話だろうと個人的には感じています。
確かに書類作成だけを切り取れば、AIによって、誰でも簡単に書類を作成できるようになるかもしれません。
書類申請も最近ではオンライン申請が普及しつつあります。
しかし、行政書士の本来の価値は書類作成や提出代行ではなく、コンサルティングにあります。
行政書士にご相談されるお客様には、それぞれの理想(ゴール)があります。
- 飲食店営業許可を取得してお店をオープンしたい
- 遺言書を作成したい 等
しかし、その理想(ゴール)を阻む難解な法律やルール、複雑な書類作成という壁が立ちはだかっています。
- 許可を取るための要件や基準がよくわからない
- 必要書類や提出先がわからない 等
行政書士は、お客様の理想(ゴール)を実現させるために、書類作成や提出だけに留まらず、関係法令や許可基準についてわかりやすくお客様にご説明したり、準備すべきことや必要書類などを適切にご案内するコンサルタントとして、お客様をサポートしていくことに価値があります。
以上を踏まえると、
AIに行政書士の仕事が奪われてしまうのは、まだまだ遠い未来の話
行政書士の仕事が完全にAIに奪われてしまう頃には、きっとほとんどの職業も無くなっているだろうと思います。
4.専門性が無いから
行政書士は「専門性が無い・低い」と言われがちです。
その要因として、
行政書士の扱える業務範囲があまりに広すぎる
ことにあります。
例えば他士業と比較してみると、
士業 | 業務範囲 |
---|---|
弁護士 | 法律業務全般の専門家 |
弁理士 | 特許申請や知的財産に関する専門家 |
税理士 | 税務に関する専門家 |
司法書士 | 登記申請に関する専門家 |
社会保険労務士 | 社会保険や労務に関する専門家 |
行政書士 | 書類の作成や提出代行の専門家 |
このように他士業の場合、専門分野がはっきりとしていますが、行政書士だけ今一つ具体性に欠けます。
だからこそ、行政書士は「自ら専門性を見出していく」必要があります。
例えば、
- 建設業に特化した行政書士
- 自動車手続きに特化した行政書士
- 入管業務に特化した行政書士
このように、行政書士として
何を専門に扱っているのか?
どんな書類作成や行政手続きに特化しているのか?
を確立していくことが重要です。
一見、専門性が低いように見える行政書士でも、自ら専門性を見出し、行政書士と言う資格を自分流にカスタマイズできる点は、行政書士ならではの魅力と言えるでしょう。
行政書士を批判する声の正体

そもそも行政書士や行政書士資格を批判する人とはどんな方でしょう?
- 行政書士試験に挫折した人
- 何年も行政書士試験に合格できない人
- 行政書士として独立開業したが廃業してしまった人
恐らく、このような方々だと思います。
私の周囲にはもちろん、私がお付き合いさせていただいている他士業の先生で、行政書士を批判したり、見下すような態度をとる方は一切いません。
資格の難易度で優劣をつけようと考えるのは、ネットの世界だけではないかと思います。
実務の世界では、資格の難易度ではなく「何ができる人なのか?」という視点で見られます。
それにどんな資格や職業であっても一定数、批判の声は存在しますので、大切なことはそういった情報に流されず、行政書士資格を取得する目的を自分の中で明確にすることと、行政書士としてどんな専門分野を確立するかです。
行政書士になるための道

行政書士になるには、毎年11月の第2日曜日に実施されている行政書士試験に合格する必要があります。
公務員として17年以上(もしくは20年以上)の勤務経験をお持ちの方や、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士の資格をお持ちの方は、行政書士試験を受けずとも行政書士資格を有します。
行政書士資格を取得後、日本行政書士会連合会へ登録申請を済ませることで、晴れて行政書士になることができます。
ちなみに行政書士資格を持っているだけでは、行政書士ではなく行政書士有資格者と呼ばれ、行政書士を名乗ることも、お客様から仕事の依頼を受けることもできません。
行政書士試験に関する具体的な情報

行政書士試験の難易度
年度 | 受験申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
令和6年度 | 59,832 | 47,785 | 6,165 | 12.90% |
令和5年度 | 59,460 | 46,991 | 6,571 | 13.98% |
令和4年度 | 60,479 | 47,850 | 5,802 | 12.13% |
令和3年度 | 61,869 | 47,870 | 5,353 | 11.18% |
令和2年度 | 54,847 | 41,681 | 4,470 | 10.72% |
令和元年度 | 52,386 | 39,821 | 4,571 | 11.48% |
平成30年度 | 50,926 | 39,105 | 4,968 | 12.70% |
平成29年度 | 52,214 | 40,449 | 6,360 | 15.72% |
平成28年度 | 53,456 | 41,053 | 4,084 | 9.95% |
平成27年度 | 56,965 | 44,366 | 5,820 | 13.12% |
平成26年度 | 62,172 | 48,869 | 4,043 | 8.27% |
平成25年度 | 70,896 | 55,436 | 5,597 | 10.10% |
合格率は約10%。
10人受けても、1人しか合格できない狭き門であることがわかります。
どのぐらいの期間で合格できる?
私の経験をお話すると、1年あれば働きながらでも十分合格できる試験です。
ただし、独学で挑戦するのか、通信講座やスクール通学を活用するのか、1日に確保できる勉強時間や、普段の生活スタイルなどによって異なります。
最短かつ1発合格を目指すなら、通信講座やスクール通学の活用をオススメします。
以下の記事でおすすめ通信講座をまとめたので、興味がある方はぜひ。
行政書士は胸を張ってよし
行政書士は決して恥ずかしい資格ではありません。
あなたのできる専門性を伸ばし、明確に目的を持って活躍している方は(行政書士に限らずですが)胸を張ってその道を歩んでいいと思います。