行政書士は独立可能な国家資格です。
じゃあ、
独立開業した行政書士は一体どれだけ稼げるの?
が気になるところかと思います。
本記事では、独立開業した行政書士のリアルな年収について、現役の行政書士が解説いたします。
行政書士の仕事内容

行政書士の役割とは?
お客様からご依頼を受けて書類の作成・提出を遂行するのが行政書士の主な仕事です。
行政書士は「行政」と「国民」を繋ぐ架け橋としての役割を果たします。
行政書士は、行政書士法(昭和26年2月22日法律第4号)に基づく国家資格者で、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理、遺言書等の権利義務、事実証明及び契約書の作成、行政不服申立て手続代理等を行います。
引用:日本行政書士会連合会
行政書士の仕事については、以下の記事で詳しく解説しております。
行政書士の平均年収

行政書士の平均年収は約550万円
厚生労働省の調査によると、行政書士の平均年収は約550万円です。
しかし、行政書士と言っても様々な分類があり、
独立開業している方
雇用されている方
副業として活動している方
ダブルライセンスの方
など、働き方や立場に応じて年収は異なってきます。
残念ながら、行政書士資格のみで独立開業している方の年収に関する明確なデータは見当たりませんでした。
つまり、ネットに掲載されている行政書士の平均年収に関しては参考程度として捉えておくのが良いでしょう。
ちなみに、私の感覚をお話しすると、行政書士資格のみで独立開業している方は、
「稼いでいる行政書士」と「稼げていない行政書士」の差が非常に激しい
という印象です。
行政書士と他の資格職との年収比較
士業 | 平均年収 |
---|---|
弁護士 | 1121.7万円 |
弁理士 | 1121.7万円 |
司法書士 | 1121.7万円 |
土地家屋調査士 | 1121.7万円 |
社会保険労務士 | 947.6万円 |
税理士 | 746.7万円 |
行政書士 | 551.4万円 |
独立開業した行政書士の年収は?
行政書士で独立開業した場合の年収は、結局のところ自分次第です。
具体的な金額が知りたい…
そう思う気持ちは痛いほどわかります。
私自身も行政書士として独立開業する前、
食っていけるのだろうか?
生活していけるのだろうか?
本当に独立しても大丈夫なのだろうか?
そんな不安を払拭してくれるような、安心できる情報や根拠が欲しかったので、何度も何度も行政書士の年収について調べたものです。
しかし、「行政書士で独立=起業」なので「社長になったらいくら稼げるのか?」を調べても明確な答えが出てこないのと同様、結局は自分次第となるのです。
実際に年収200万円未満の行政書士もいれば、年収1,000万円以上の行政書士も存在します。
行政書士の独立開業に関するメリット

【メリット①】コストを抑えて開業できる
起業の際には、多かれ少なかれ初期費用(開業コスト)が発生します。
例えば、飲食店を開業する場合は、少なくとも、
物件を確保するための敷金・礼金
内装費
調理器具等の設備購入費
などが必要であるため、「初期費用は平均1,000万円前後」と言われております。
一方、行政書士は60〜90万程度で開業できるため、初期費用が他業種と比較しても圧倒的に抑えられるのがメリットです。
項目 | 初期費用の目安 |
---|---|
行政書士登録費用 | 約30万円 |
事務所の初期費用 | 約20万円~(事務所の形態による) |
設備購入費 | 約10~30万円 |
合計 | 60〜90万円 |
行政書士の登録費用は必ず必要となりますが、事務所の初期費用は自己所有物件であれば費用はかかりませんし、最近だとレンタルオフィスでコストを抑えて事務所を確保することも可能です。
以下の記事でレンタルオフィスについて詳しく解説しています。
好条件で開業したい!という方は要チェックです。
設備費用も既に所有しているPCやデスクセットを使用する場合でしたら、後はプリンターや固定電話の設置費用、書籍購入費くらいなので、設備費用もそこまでかかりません。
【メリット②】ランニングコストが抑えられる
個々の状況にもよりますが、行政書士事務所はランニングコスト(販管費)をかなり抑えることができます。
ランニングコストとは、毎月支払うべき費用です。
項目 | コスト | 詳細 |
---|---|---|
地代家賃費 | 0~50,000円 | 所有物件、賃貸物件、事務所の立地によって変動 |
水光熱費 | 10,000~15,000円 | 水道、電気、ガス代 |
通信費 | 10,000円 | ネット代、固定電話、サーバー代 |
会費 | 6,000円〜 | 3~6か月にまとめて支払い |
合計 | 約10万円 |
上記のように、月の販管費を10万円程度に抑えられます。
開業当初は売上目途が立たない、または安定しないので、ランニングコストはなるべく抑えておくに越したことはありません。
【メリット③】仕入れ&在庫リスクが無く利益率が高い
行政書士が提供するサービスは無形商材に該当します。
無形商材とは
保険などの金融商品、パソコンのソフト、スマートフォンのアプリなどの形の無いサービス
つまり、サービス提供にあたり、原材料の仕入れや製造、加工、調理といった手間などが発生せず、在庫を抱える(売れ残り)リスクもありません。
前述したように行政書士事務所はランニングコストを抑えられるため、手元に残る利益額が多く、利益率が高いです。
利益率 =(売上高 – 販管費)÷ 売上高 × 100(%)
行政書士の独立開業に関するデメリット

【デメリット①】ライバルが多い
行政書士に限ったことではありませんが、必ずライバル(競合)が存在します。
令和6年11月末日の時点で個人事務所開業の行政書士は49,335名です。(参照:日本行政2025年1月号)
しかし、必ずしも行政書士全員がライバルになるわけではありません。
「取扱い業務分野×地域」でリサーチしたときに、ヒットする行政書士事務所が本当のライバルです。
【デメリット②】売上を安定化させるのが難しい
行政書士は一般的に単発案件が多く、売上を安定化させるのが難しいです。
行政書士ビジネスは売り切り型、フロー収益ビジネスに該当します。
フロー型ビジネス(売り切り型) | ストック型ビジネス(継続型) | |
---|---|---|
メリット | 受注件数が増えれば、その分売上が上がる | 毎月の売上が安定する 顧客数が増えれば、集客や営業活動の工数が少なくて済む |
デメリット | 売上が安定しない 常に集客、営業活動が必要 | 売上を安定化させるまでに時間がかかる 単価が低い |
例 | 許認可申請(行政書士) 登記申請(司法書士) | 税務顧問(税理士) 労務顧問(社労士) 法務顧問(弁護士) |
行政書士が顧問サービスを提供することは一般的には難しいと言われております。
税務や労務に関する手続きは毎月発生する一方、行政書士の顧問サービスにて毎月価値を発揮するのが難しいからです。
そのため、行政書士で顧問サービスを展開していくためには、顧問先が価値を感じるレベルの高い専門性を有することが必須となります。
しかし、単発案件とは言え、満足度の高いサービスを提供していれば、同じお客様から別のご依頼を追加でいただけることもあります。
顧問サービスのような毎月継続した取引が無くとも、過去にご依頼いただいたお客様が10人、20人と徐々に増えていけば、そのお客様の中から追加のご依頼をいただけるようになりますし、お客様からお客様をご紹介いただけるようにもなります。
【デメリット③】確定申告が必須
行政書士で独立開業すると、確定申告が必要となります。
確定申告とは、年間の売上から経費等を差し引いて所得を算出し、税金額を申告する手続きです。
会社に勤めていれば、毎月の給与から税金や社会保険料が天引き(源泉徴収)されるため、煩雑な手続きをせずに済みますが、個人事業主は自身で計算して税金を納める必要があります。
ややこしい手続きではあるものの、「freee会計」や「弥生会計」などの会計ソフトを導入することで、確定申告はもちろん、日々の記帳入力も簡単に行えます。
ちなみに、私は「freee会計」を使って確定申告をしていました。
実際に使ってみた感想は、
- 会計知識がなくても簡単に処理ができる
- ヘルプが充実しているので疑問点がすぐに解決する
というメリットがあります。
独立開業の行政書士には十分な機能が詰まっているので、おすすめです。
行政書士の年収に影響する要因と具体例

取扱分野によって単価が変動する
業務内容 | 平均報酬額 |
---|---|
建設業許可申請(法人・新規)知事許可 | 137,618円 |
農地法第3条許可申請 | 49,587円 |
自動車登録申請(新車新規) | 7,443円 |
自動車保管場所証明申請書(車庫証明) | 13,330円 |
飲食店営業許可申請 | 47,251円 |
風俗営業許可申請1号(社交飲食店・料理店) | 164,731円 |
古物商許可申請 | 53,585円 |
医療法人設立認可申請 | 622,825円 |
旅館業許可申請 | 216,970円 |
在留資格変更許可申請(居住資格) | 94,385円 |
遺言書の起案及び作成指導 | 68,727円 |
遺産分割協議書の作成 | 68,325円 |
離婚協議書作成 | 57,624円 |
会社設立手続き | 93,878円 |
取扱う業務分野によって単価が大きく異なります。
単価が高ければ高いほど、作成する書類の量、業務完了までの工数や時間もかかるイメージです。
行政書士で年収を上げていくためには?
年収を上げていくには、当然ながら売上を伸ばしていかなければなりません。
売上 = 顧客数 × 単価 × リピート率
売上を構成する「顧客数」「単価」「リピート率」を最大化させることで、売上と自身の年収が向上します。
ただし、前述した通り行政書士業務の多くは単発業務であるため、「顧客数」を如何に増やしていくかを最優先に考える必要があります。
- 専門分野を決めること
- マーケティング活動に注力すること
① 専門分野を決める
専門分野を決めることは、行政書士として顧客に提供するサービス(商品)を決めることを意味します。
行政書士は取り扱える業務が広いですが、ゆえに「何ができる人なのか?」がわかりにくく、誰に向けて営業活動やマーケティング活動をすべきかが定まりません。
なので、独立開業前に専門分野の候補を1~3つ決めておきましょう。
行政書士で生き抜くための専門分野の決め方については、以下の記事で解説しています。
② マーケティング活動に注力する
お客様からの依頼が無ければ売上はいつまでたっても0円です。
マーケティングとは、サービス(商品)が売れる仕組みのことを意味します。
つまり、お客様からの「お問合せ」や「ご依頼」を増やすための活動が重要になります。
人にもよりますが、多くの方がWEBサイトによる集客がメインになると思います。
しかし、WEBサイトを制作しただけでは、問合せが来る可能性はほぼ0%と言っても過言ではありません。
なぜなら、自身のサイトよりも競合他社のサイトの方が上位に表示されるので、そもそもアクセスしてもらえないからです。
- 集客サイトを公開した初月のアクセス数が15件
- 翌月で23件、翌々月で44件、もちろん問合せは0件
お客様が実際にGoogle等で検索するであろうキーワードで検索しても、私のサイトは上から30〜40番目にやっと表示されるレベルでした。
その後もアクセス数が伸びず、問合せ0件が数か月続きました。
そうならないためにも、WEB集客での顧客獲得を検討している方は、事前にWEBマーケティングに関する予習をしておくことをオススメします。
私のように開業してから習得すると、WEB集客の成果が出るまでかなり遠回りをしてしまいます。
ホームページについては、以下の記事で解説していますので、ぜひ覗いてみてください。
年収UPをめざせるダブルライセンス
行政書士の資格以外に税理士や社会保険労務士などの他資格を取得していることをダブルライセンスと言います。
独立開業者の場合、行政書士と相性の良い他資格を持つことで、対応業務の拡大と売上の向上により年収を増やすことが期待できます。
行政書士のダブルライセンスについては、以下の記事にまとめていますので、興味がある方はどうぞ。
最後に 独立開業行政書士の年収は自分次第
以上、独立開業した行政書士の年収について解説いたしました。
統計上、行政書士の平均年収は約550万円ですが、働き方や立場に応じて年収は異なり、独立開業なら年収1,000万円以上を目指せます。
行政書士で独立開業すると言うことは、同時に経営者になることを意味します。
相応のリスクを背負うことにもなりますが、自分次第でいくらでも収入を上げられますし、億超えの行政書士も存在します。
独立開業で最も重要なことは、顧客獲得のための戦略と実行を繰り返していくことです。