行政書士の働き方

行政書士のダブルライセンス

1つの資格だけでなく、2つ以上の資格を持つことをダブルライセンスと言います。

行政書士がダブルライセンスで活動するメリットは?
行政書士と相性が良い資格は?

こちらの記事では、行政書士のダブルライセンスについて解説していきます。

この記事を書いた人
行政書士ヤマハチ 現役行政書士
30歳で行政書士事務所開業
1年目の売上16,500円という絶望から、開業3年目で売上1,800万円達成

ダブルライセンスの意義

ダブルライセンスを目指す理由を明確に

そもそもダブルライセンスを検討する理由は何でしょうか?

自己啓発が目的で行政書士以外の資格取得を検討しているのであれば、自身が取りたい資格を目指せば良いでしょう。

しかし、将来的に行政書士として独立開業を検討している方が、行政書士資格だけでは食べていけるか不安だからダブルライセンスを目指そうと考えている場合でしたら、

安易にダブルライセンスを目指すのはオススメしません。

なぜなら、ダブルライセンスはあくまで行政書士業務の売上を底上げするための手段に過ぎないからです。

飲食店で例えるのであれば、

ラーメン屋(=行政書士事務所)を開店するために調理技術(=行政書士資格)を習得したが、ラーメンのコンセプトを決めないまま、売上の不安を感じて、その他のメニュー開発(=ダブルライセンス)をどうしようか悩んでいる

ようなものです。

つまり、自分自身が行政書士業務でどのようなサービスを、どのようなお客様に提供するのか?などのビジネスプランが定まっていない状態で、ダブルライセンスを目指すのはオススメしないということです。

少し厳しい言い方すると、

行政書士で売上を伸ばせない方がどれだけ沢山の資格を取得したとしても、結局売上が伸びることは無い

と思います。

なので、ダブルライセンスを検討する際は、まず初めに行政書士として取り扱う専門分野や顧客ターゲットを明確にしてからにしましょう。

ダブルライセンスに固執しなくて良い

大前提、行政書士資格だけでも十分稼ぐことができます

なので、ダブルライセンスが行政書士として成功するための必須条件ではありません。

ただ、資格スクールのサイトや広告では度々、行政書士のダブルライセンスをオススメしているのを見かけます。

ダブルライセンスをオススメする例
  • 行政書士に合格
    • 社労士とのダブルライセンスを目指そう!
  • 行政書士に合格
    • 司法書士とのダブルライセンスを目指そう!
  • 宅建士に合格
    • 行政書士とのダブルライセンスを目指そう!

資格スクールも受講生の受講料によって成り立っているビジネスです。

つまり、常に受講生を確保しなければならないため、1つの講座だけでなく、他の資格講座への申し込みに繋げたいという意図もあり、ダブルライセンスや難関資格へのステップアップを推奨している側面が多少なりともあります。

なので、自己啓発が目的のダブルライセンスは別ですが、独立開業での成功が目的であれば、ダブルライセンスに固執する必要はありません。

重要なことなので再度言いますが、行政書士資格だけでも十分稼ぐことができます

ダブルライセンスのメリット3選

  • 売上の向上 
  • 競合優位性の確立
  • 顧客ターゲット層が広がる

1.売上の向上 

ダブルライセンスのメリットとして真っ先に上がるのが、売上の向上です。

なぜなら、行政書士ではできない業務範囲のサポートも可能となるからです。

例えば、会社設立の依頼を受けた場合、行政書士では行うことのできない手続きが必ず発生します。

手続きライセンス詳細
登記申請行政書士定款認証まではサポートできるが、登記申請は司法書士へ外注する必要あり
行政書士
+司法書士
登記申請まで一人で完結できる
労務手続き行政書士会社設立後に必要となる手続きのご案内または社労士を紹介することしかできない
行政書士
+社労士
会社設立後の社会保険の手続き、給与計算、助成金の申請なども提案・サポートできる
税務手続き行政書士会社設立後に必要となる手続きのご案内または税理士を紹介することしかできない
行政書士
+税理士
会社設立後の税務コンサルや決算申告なども提案・サポートできる
会社設立の依頼を受けた場合の例

上記のように、行政書士ではサポートできない業務分野でも、

ダブルライセンスによってワンストップで対応が可能

となり、その分売上の向上に繋がります。

特に税理士社労士の場合だと「税務顧問」や「労務顧問」として継続案件(=ストック収入)にも繋げられるので、顧問先を徐々に増やしていくことができれば、毎月の売上を安定化させることもできます。

顧客の立場では、どこまでが行政書士の業務範囲なのかよくわからないものです。

依頼内容によって社労士事務所や税理士事務所など、対応窓口が変わることを手間に感じるため、1つの事務所で全てを任せられるワンストップ体制は、顧客にとっては大きなメリットと言えます。

2.競合優位性の確立

ダブルライセンスがあれば、競合他社に対して比較的簡単に差別化を図ることができます

なぜなら、先ほど紹介したワンストップ体制が可能であるだけで、行政書士業務のみを提供する競合他社への優位性を確立することになるからです。

また、集客サイトや名刺にもダブルライセンスであることを記載することによって、専門性や顧客へのメリット訴求がしやすくなるのもメリットだと言えるでしょう。

3.顧客ターゲット層が広がる

ダブルライセンスによって顧客ターゲット層が広がるメリットがあります。

単純に取り扱い業務の幅が広がるため、行政書士業務の依頼だけでなく、保有している資格に関する業務のご相談やご依頼、ご紹介も見込めるようになります

行政書士と相性が良いダブルライセンス4選

  • 社会保険労務士
  • 税理士
  • 司法書士
  • 中小企業診断士

1.社会保険労務士

個人的に行政書士と最も相性の良い資格だと思うのが社会保険労務士です。

特に、行政書士として許認可申請を専門に取り扱うのであれば相性は抜群です。

なぜなら、許認可申請の性質的に、顧客の多くがこれから事業を始めようとする方であるため、「許認可申請」と「会社設立」の両方をご依頼されることがよくあるからです。

会社設立後には年金事務所、ハローワーク、労基署などへの労務に関する必要手続きが発生します。
(例:新規適用届、給与支払事務所等の開設届など)

従業員を雇用するとなれば、社会保険の手続き、就業規則の作成、助成金の検討、給与計算と煩雑な労務手続きも必要となります。

これらの労務手続きに関しては社労士の業務分野となるため、行政書士としては依頼を受けることができません

しかし、社労士とのダブルライセンスであれば、会社設立後も労務顧問として継続的なお付き合いが可能となります。

依頼内容活用資格報酬
会社設立+許認可申請行政書士約20~30万円
労務顧問+給与計算社会保険労務士月1~3万円
※許認可申請の内容によって報酬は変動
※労務顧問や給与計算も従業員数等の規模によって月額料が変動

このように行政書士業務でフロー収益(=単発業務)を創出し、社労士業務でストック収益(=継続業務)の構築という理想的な収益構造になります。

2.税理士

税理士も社労士とほぼ同じ理由です。

会社設立後に税務手続きは必須となりますので、税理士とのダブルライセンスであれば、税務顧問としての継続案件や決算申告の業務に繋げることができます。

行政書士との相性が良い資格であることは間違いありませんが、行政書士とのダブルライセンスを目的として取得するには、税理士試験は難易度が高すぎるため現実的ではありません

一般的には税理士で開業される方が併せて行政書士も登録するというパターンがほとんどです。

3.司法書士

司法書士は登記申請の専門家です。

登記申請には、法人に関する商業登記、不動産に関する不動産登記が存在します。

行政書士としての会社設立業務や不動産が絡む相続業務のとき、司法書士とのダブルライセンスがあればワンストップ対応が可能です。

しかし、こちらも税理士と同様、行政書士資格と相性は良いものの、司法書士試験も難易度が高すぎるため、行政書士のダブルライセンスとして司法書士を目指すのは現実的ではありません

4.中小企業診断士

中小企業診断士は、経営コンサルタントの国家資格です。

独占業務がある資格ではありませんが、メイン顧客が企業である場合、経営コンサルタントやアドバイザーとして、行政書士とは違った角度からサービス提供が可能となります。

また、補助金申請に関しても中小企業診断士とのダブルライセンスは有効的です

行政書士のダブルライセンスに関するまとめ

「行政書士資格のみで稼ぐことが不安」という理由で、最初からダブルライセンスを検討するのはオススメできません。

しかし、行政書士としての専門分野や事業展開の方向性が定まった上で、メインで取扱う業務と相性の良い資格であれば、ダブルライセンスによる売上向上や対応業務の拡大ができるというメリットがあります。