開業ノウハウ

【初心者必見】行政書士報酬額を決める方法!成功する交渉術も紹介

行政書士が受ける報酬額は、自分で自由に決めることができます。

しかし、初めての独立開業なら適正価格がわからず、

安くすると心配事が増えるかも…
高くすると依頼が減るかも…

と、不安を抱える方もいらっしゃるでしょう。

結論、報酬額は相場に合わせて良いです。

ただし、しっかりと中身のある、納得してもらえる価値が伴っていることが重要です。

本記事では、現役の行政書士が「行政書士の報酬額を決めるポイントや交渉術」について解説します。

どの業務でも適切な価格設定ができるようになるため、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を書いた人
行政書士ヤマハチ 現役行政書士
30歳で行政書士事務所開業
1年目の売上16,500円という絶望から、開業3年目で売上1,800万円達成

まずは報酬額の相場を知る

全国の報酬額統計を参考にする

報酬額を決めるなら、まずは酬額の相場を知ることから始めます。

日本行政書士会連合会のHPに報酬額統計調査の結果が掲載されているため、「どの業務がどれくらいの報酬を受けているか」というデータを確認できます。

統計結果の右側にある「最頻値」が大まかな相場ですので、主に以下の黄色枠部分を参考にしましょう。

日本行政書士会連合会|報酬額統計調査の結果 一部抜粋

ただし、注意すべきことは、

  • 全国の統計結果である
  • サービスの実態まではわからない

ということです。

報酬額に見合うサービスや価値があって初めて適正価格と言えるため、実態のリサーチは欠かせません。

競合他社をリサーチする

次は、競合他社のHPを見て、具体的な報酬額やサービス内容などを把握しましょう。

主にリサーチすべき事務所は以下の2通りです。

  • 事務所のエリアが重複する行政書士
  • 日本国内のトップレベル行政書士

以下の表に、価格設定の指標をまとめました。

これは、報酬額統計の最頻値(相場)=基準としたときに、
「事務所エリア重複」と「トップレベル」の各報酬額が基準より高いか低いか、
そして、その結果どう判断すべきかという指標です。

事務所エリアトップレベル価格設定の指標
高い高い同じ価格帯でOK
高い同等エリア or 全国の相場に合わせる
 ※エリア特有の高需要、または競合のサービスがかなり強い可能性あり
高い安いエリア or 全国の相場に合わせる
 ※エリア特有の高需要、または競合のサービスがかなり強い可能性あり
同等高い全国の相場に合わせる
 ※トップが強いだけの可能性あり
同等同等同じ価格帯でOK
同等安い全国の相場に合わせる
 ※トップは依頼数の多さで利益をカバーしている可能性あり
安い高いエリア or 全国の相場に合わせる
 ※エリア特有の事情、またはトップが強いだけの可能性あり
安い同等エリア or 全国の相場に合わせる
 ※エリア特有の事情がある可能性あり
安い安い同じ価格帯でOK
全国相場を基準に「事務所エリア」と「トップレベル」の報酬額を比較したときの価格設定の指標

事務所エリアが重複する行政書士事務所が一番の競合となり得るため、「競合はどの価格帯か?」は、チェックしておきましょう。

簡単に真似できないような権威性を主張する競合はいるかもしれませんが、逆にあなたの付加価値を見つければ臆することはありません。

リサーチのポイント

前述の表を参考に価格設定すれば、的外れな報酬額にはならないと思います。

しかし、価格設定の本質は、報酬額に見合うサービスや価値を提供できるかどうかです。

以下の項目を参考に入念なリサーチを行い、自身の事務所運営に活かしましょう。

リサーチする項目
  • 報酬額(料金表)
  • サービス内容
  • お客様の声や口コミ
  • 事務所の強みや訴求ポイント
  • 事務所所在地、開業日等(運営情報)
項目ポイント
報酬額(料金表)・全国の相場(報酬額統計調査の結果)と比較する
サービス内容・報酬額に見合うサービスが何かを確認する
お客様の声や口コミ・お客様の声で「感動」が生まれているエピソードを確認する
 →付加価値の参考になる
・Googleマップで評価★4以上の口コミを確認する
 →口コミ数は目指すべき指標の一つにもなる
事務所の強みや訴求ポイント・自身の事務所との違いを確認する
事務所所在地、開業日等
(運営情報)
・同エリアで開業から3年以上なら長期的な競合となり得る
リサーチすべき項目と注目ポイント

報酬額を決める3つのポイント

ここまでのリサーチによって、お客様の求めるサービスがわかってきたかと思います。

続いて、料金表へ落とし込む前に報酬額を決める時に考慮すべき3つのポイントを紹介します。

  • 複数のプランを設定する
  • オプションや難易度加算を設定する
  • 安易な安売りはしない

① 複数のプランを設定する

サービス内容と報酬額が「ずらっと羅列された料金表」よりも「プランでまとまった状態」の方がお客様が理解しやすく、こちらの管理もしやすいです。

さらに、お客様の予算やニーズに沿った提案もできるため、複数のプランを設定することをオススメします。

プラン名の例詳細(価格設定は工数に応じて加減)
スタンダードプラン
ベーシックプラン
標準プラン
・専門性の高い部分を対応するプラン
サービスの例:書類リストアップ・作成・申請代行、行政機関との対応代行
価格設定の例:相場
プレミアムプラン
フルサポートプラン
完全お任せプラン
・すべて行政書士にお任せするプラン
サービスの例:上記に加え、書類収集代行、付随する手続の代行
価格設定の例:相場×1.4倍
ライトプラン
エコノミープラン
書類チェックプラン
・書類チェックのみ対応するプラン
サービスの例:お客様が作成した書類の誤りや不足を確認
価格設定の例:相場×0.7倍

中にはプランを作成しづらい業務もあるかと思いますが、できるだけお客様が迷わず判断できるように整理することは大切です。

成功する交渉術:2択で提案する

お客様へのご提案は、2つのプランを提示することが効果的です。

これは「二者択一法」という心理テクニックです。

例えば、1つのプランを提案した場合、「依頼するか、しないか」という2択で考えるため、「依頼しない」を選択される可能性があります。

しかし、「どちらのプランにするか」という提案なら、脳が「Aか、Bか」という2択で判断するため、受注に繋がりやすくなります。

ただし、依頼意思が低い状態の方には通用しづらいテクニックでもあります。

そのため、対話の中でお客様に依頼の必然性等を訴求しつつ、クロージングの場面で、

  • スタンダードプラン(10万円):比較的安価で人気
  • プレミアムプラン(15万円):すべてお任せだから満足度が一番高い

と、2つのプランを提案することが成功のポイントです。

② オプションや難易度加算を設定する

行政書士業務では、お客様の状況によってどうしても難易度が上がってしまうというケースが発生します。

そのため、予めオプションや難易度加算の報酬額を設定することで、

  • トラブルを未然に防げる
  • 見積金額に納得されやすくなる
  • 事務所の収支を把握しやすくなる など

という利点があります。

オプションや難易度加算の例詳細
お急ぎ案件+4万円
例:通常1週間かかる業務を3日以内で対応
リカバリー案件
(再申請)
+3万円
例:自己・他社申請で不許可となった後の依頼
メインの付随案件+4万円
例:申請に伴う各種手続代行やコンサルティング
難しいとされる案件+4万円
例:夫婦で年齢差のある配偶者ビザ申請など

成功する交渉術:実績を得るための割引活用

開業したての行政書士の中には、

アピールできる実績を早く充実させたい
ブランディングの一環として口コミを集めたい

という方もいらっしゃると思います。

そんなときは、割引を提案することで案件やお客様の声、口コミを獲得しやすくなります

項目割引例
相談料の割引・初回相談無料、通常60分1万円
付随案件の割引・合計金額から20%OFF
リピート顧客の割引・5%OFF
既存顧客からの紹介・15%OFF
お客様の声や口コミ投稿の協力・10%OFF
・オプション料金の値引き

ただし、過度な割引は避けましょう。

ちなみに、「お客様の声や口コミ投稿の協力」は、全員ではなくターゲットを決めてお願いすることが成功のポイントです。

例えば、「★5:元気一杯の先生でした!」という声が100件あっても、それが今後の成果に繋がる可能性は低いでしょう。

仮にコンセプトが「元気一杯の行政書士!」ならば、満点の口コミだと思います。

しかし、そうではないなら、あなたの強みやコンセプトに沿った一貫性のある口コミを増やしていくことが重要です。

そのため、ターゲットを厳選しながら「口コミ協力の割引」を活用すると、人が人を呼ぶ仕組みが出来上がります。

③ 安易な安売りはしない

戦略的な価格変動や割引なら問題ありません。

しかし、「新人だから」「経験が浅いから」等の理由で単純に報酬額を下げるのは逆効果です。

安売りの落とし穴
  • 値上げした途端に顧客が離れ、継続案件に繋がらない
  • 値上げのタイミングを見失い、適正価格に戻せなくなる
  • 薄利多売になり、資金が少なくなってしまう
  • 顧客の質が低下し、クレームや面倒ごとの可能性が増える
  • サービスの質が悪いのでは?と思われてしまう恐れがある

ずっと値下げしたままではいられないため、いつか値上げすべき瞬間が来るはずです。

1年経ったら…
黒字になったら…
食えるようになったら…

と決めていたとしても、

価格を戻したら顧客離れが起きて売上が0になるのでは…!?

と怖くなり、動き出せなくなるようなことがあれば本末転倒です。

逆に、報酬額が高い方が「失敗しない、頼りになる行政書士」と認識してもらえることもあります。

今は業務に自信がなかったとしても、未来の自分を苦しめかねない安易な値下げは避けましょう

行政書士のプライドを持って適正価格で価値を提供し続けることが長期的な成功に繋がります。

最後に 持続可能な事務所運営へ

以上、行政書士事務所の報酬額の決め方を解説いたしました。

まずは相場を知る
  • 報酬額統計調査の結果を参考にする
  • 競合をリサーチする
    ・事務所のエリアが重複する行政書士
    ・日本国内のトップレベル行政書士
報酬額を決める時のポイント
  • 複数のプランを設定する
  • オプションや難易度加算を設定する
  • 安易な安売りはしない

報酬額を決めるだけなら、相場や競合に合わせて良いです。

ただし、納得してもらえる報酬額として重要なことは、報酬額に見合うサービスや価値の提供です。

競合をリサーチし、お客様が求めるサービスは何か、自分が提供できる付加価値は何かを理解しましょう。

そして、適切な報酬額の設定を行うことで、持続可能な行政書士事務所を構築できます。

とは言っても、

経営は常に本番、絶対に成功させなきゃいけない

とは思わない方が良い。というのが個人的な意見です。

「より良い、ベターな状態」は目指すべきですが、新人経営者が初めから「完璧な状態」を作れることはほぼないでしょう。

少しくらいミスがあっても、むしろトレーニング、リハーサルだと思って、次に活かすよう動き出すべきです。

「実行→振返り」を何度も行い改善していくことで、経営は最適化され、自分自身の成長に繋がります。

(あくまでも経営のお話なので、行政書士業務は初めてだろうが絶対にミスしない気持ちで。)

行政書士の開業を目指す方の参考になれば幸いです。

開業準備中の方へ
こちらの記事に必須アイテムを網羅させていますので、ご参考にどうぞ!