行政書士を目指したいが、予備校や通信講座に登録するのは値段がちょっと…。独学で頑張ってみたい!と考える方はいるかと思います。
・独学でも行政書士試験に合格できるの?
・知識が身に付く勉強方法を教えてほしい
こちらの記事では、そのような疑問について現役の行政書士が独学合格の可能性や勉強方法を紹介します。
行政書士試験を独学で挑む

行政書士試験は難関試験と言われていますが、独学でも十分に合格可能です。
ただし、大前提として、しっかりとした勉強計画と継続的に勉強していく強い意志が必要です。
まずは、知っておきたい行政書士試験の基本的な情報を紹介します。
試験概要
試験会場 | 全国約60か所(大学、多目的ホール、ホテル等) |
試験日 | 毎年11月の第2日曜日 |
試験時間 | 13:00~16:00(休憩なし) |
受験料 | 10,400円 |
受験資格 | 年齢、学歴、国籍に関係なく誰でも受験できる |
試験科目 | 【法令科目】 基礎法学、憲法、行政法、民法、商法/会社法 【基礎知識科目】 一般知識、情報通信・個人情報保護及び文章理解、行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令 |
出題形式 | 五肢択一式、多肢選択式、記述式 |
合格基準 | 以下の要件全てクリアで合格 ・法令科目が122点以上(244点満点) ・基礎知識科目が24点以上(56点満点) ・全体の得点が180点以上(300点満点) |
合格率と合格基準
年度 | 受験申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
令和6年度 | 59,832 | 47,785 | 6,165 | 12.90% |
令和5年度 | 59,460 | 46,991 | 6,571 | 13.98% |
令和4年度 | 60,479 | 47,850 | 5,802 | 12.13% |
令和3年度 | 61,869 | 47,870 | 5,353 | 11.18% |
令和2年度 | 54,847 | 41,681 | 4,470 | 10.72% |
令和元年度 | 52,386 | 39,821 | 4,571 | 11.48% |
平成30年度 | 50,926 | 39,105 | 4,968 | 12.70% |
平成29年度 | 52,214 | 40,449 | 6,360 | 15.72% |
平成28年度 | 53,456 | 41,053 | 4,084 | 9.95% |
平成27年度 | 56,965 | 44,366 | 5,820 | 13.12% |
平成26年度 | 62,172 | 48,869 | 4,043 | 8.27% |
平成25年度 | 70,896 | 55,436 | 5,597 | 10.10% |
行政書士試験の合格率は、例年10%前後で推移しています。
しかし、合格率の低さに怯える必要はありません。
- 他の法律系国家資格の中では比較的取得しやすい
- 受験資格が不要
- マークシートの解答が多い
- 6割以上を得点できれば合格
上記のように、合格できそうと思える挑みやすさがあるため、腕試しの受験いわゆる「記念受験勢」が一定数いることで合格率が低くなっています。
と言っても、合格基準点さえ越えれば誰でも絶対合格できるのが行政書士試験の魅力でもあります。
- 法令科目が122点以上(244点満点)
- 基礎知識科目が24点以上(56点満点)
- 全体の得点が180点以上(300点満点)
例えば、「税理士試験は相対評価の試験」と言われているため、仮に合格基準点を取ったとしても、上位◯%に入らなければ合格にならず、ライバルが多ければ多いほど、合格のハードルが高くなります。
しかし、「行政書士試験は絶対評価の試験」ですので、未経験でも初学者でも何歳であっても合格基準点を越えれば合格になります。
ちなみに、行政書士試験に最年少合格した方は13歳だそうです。
独学合格の可能性と独学が向いている人の特徴
独学合格は十分に可能です。
私自身の受験歴は、1度目が独学で合格点にあと一歩及ばず…。必ず合格したいと思い、2度目は通信講座を利用して無事に合格しました。
また、私の運営する事務所のスタッフは、法律初学者でしたが、独学で合格していました。(一発合格とはいきませんでしたが。)
一般的な見解や私の経験則、事務所スタッフの特徴などを踏まえると、以下の特徴を持つ人は独学が向いていると言えるでしょう。
- 自分で情報を収集・整理し、自分に合う勉強法へ工夫ができる人
- スケジュールを立てて、計画的に物事を進められる人
- 一度決めたことをやり通す継続的な実行力がある人
- まず動いてみるという行動力がある人
- 知識欲があり、新しいことに興味を持てる人
- 既存の概念に疑問を持って自ら調査ができる人
- 先人の教えを素直に聞いて実践し、自分の経験へ活かせる人
これらの一つにでも当てはまるなら、
独学だけに留まらず、独立開業もできるような自分で道を切り拓いて行ける人
だと私は思います。
独学のメリットとデメリット

今は、インターネットで様々な情報を無料で入手できたり、SNSで受験仲間と交流ができたりするため、独学のデメリットも少なくなっています。
独学合格に必要な勉強時間と勉強スケジュール

合格に必要な勉強時間の目安
行政書士試験合格に必要な勉強時間は600~1,000時間と言われています。
しかし、法律の学習経験があるかどうかで大きく異なります。
法律初学者なら
法律の知識がゼロからのスタートの場合、1日3〜4時間の勉強を1年間は続ける必要があるでしょう。
つまり、1,000〜1,200時間が目安です。
最初は、右も左も分からず時間だけが過ぎ去っていく日々に苦しめられ、自分に合う正しい勉強法に出会うまでかなり時間を浪費します。
しかし、「これだ!」と思う勉強法に出会えば、あとはひたすら一直線に進んでいくだけで、1,000時間もかからずに合格できる可能性もあります。
法律経験者なら
法学部出身者や他の法律系資格保有者の場合、500〜600時間程度と言われています。
ただし、行政書士試験特有の科目もあるため、油断せず対策をしていきましょう。
行政法と民法の細かい部分にまで気を配って勉強を進めることがポイントです。
勉強スケジュールの組み方
スケジュールを組む時、まずはゴールとなる「目的地」を決めて、その道なりに細かい「目標」を置いていくことが重要です。
試験の合格(180点以上取ること)がゴールですので、そこから逆算して「いつまでにどの科目をどこまで終わらせるか」という具体的な数値・タスクを設定していきましょう。
試験日の1年前から勉強開始する場合のスケジュール例は、以下の記事を参考にしてみてください。
初学者の場合、自分で最初に立てたスケジュールは、間違いなく憶測ばかりですので、100%達成する方が難しいです。
でも、それは当然のことなので、勉強の過程で経験を積みながら「〇〇は何時間かかる。△△は多めにやろう。」と、何度もスケジュールを見直していく作業が必要になります。
行政書士試験対策テキストの選び方と勉強方法

行政書士試験対策のテキストは、様々な出版社から科目や出題形式ごとなどで販売されており、その全てを買い揃えることは現実的ではありません。
独学に重要なのは、効果的な参考書・問題集(テキスト)選びです。
参考書の選び方
一冊に全科目が収録されている総合的な参考書がおすすめです。
参考書の中には、行政法で一冊、民法で一冊と、科目ごとに特化されたものもあり、それはそれでとても参考にはなります。
しかし、出題頻度が低い問題まで細かく丁寧に解説されていることが却って初学者にとって悪影響の場合があります。
なぜなら、行政書士試験の合格は「300点を目指す」のではなく、「180点をどうやって超えるか」であり、出題されるか分からない知識を付けるより前に、出題頻度の高い最重要知識を押さえることに有限な時間を使うべきだからです。
そのため、出題傾向に焦点を当てた内容で、基礎からやや応用までを総合的に学べる参考書を選びましょう。
もちろん、十分に基礎知識をつけた上で、補充的に科目別の参考書を購入することもおすすめできます。
試験対策のおすすめテキストをまとめたので、ご参考にどうぞ!
問題集の選び方
問題集も何種類か販売されていますが、おすすめする問題集のジャンルは以下の通りです。
行政書士試験は過去問の知識が繰り返し利用される傾向があるため、過去問集は必須です。
他に、五肢択一式問題集や科目別問題集といった「予想問題集」もありますが、予想はあくまで予想であり、優先的に身につけるべきは高頻出の最重要知識(=過去に出題された問題)です。
参考書と同様で十分に基礎知識をつけた上で、補充的に予想問題集を購入することもおすすめできます。
独学の勉強方法-テキストの使い方-
- 参考書と問題集を何度も行き来する
- 模試は本番同様の環境で
- 模試の問題は何度も解き直す
① 参考書と問題集を何度も行き来する
参考書を読み、そこに該当する問題を解く。というシンプルな方法です。
例えば、民法の総則の「意思表示」を参考書で読んでインプットしたら、「意思表示」の分野を問題集で解いてアウトプットする。ということを細かく繰り返していきます。
1〜2周目は、全体像の把握がメインですので、恐らく正解率は低いものになると思われます。
しかし、3周目には参考書の内容が知識として定着してきたり、過去問や問われ方のパターンを覚えてきたりと基礎力が付いてきて、4周目には理解度が上がるに伴い正解率も上がっているはずです。
人間は忘れる生き物ですので、繰り返し記憶する作業をすることで、試験当日に力を発揮することができます。
② 模試は本番同様の環境で
行政書士試験は1年に1回の勝負ですので、試験に慣れておくことが重要です。
せっかく十分な知識をつけても、それが試験当日に発揮されなければ意味はありません。
予備校などで実施される模擬試験を受けることで、本番さながらの緊張感を味わえたり、問題を解く時間配分の確認ができたりと、試験に似た感覚を掴むことができます。
そのような模擬試験を受けずに市販の予想模試問題集を解く場合は、以下のことを注意してできるだけ本番環境に近づけましょう。
- 試験当日と同じく日曜日の13時〜16時に解く
- 模試を解く前日から試験日を想定した生活リズムにする
- 本番環境に寄せて、静かな場所・机の上で解く
- 時計やシャープペンシルなど、本番と同じ道具を使用する
③ 模試の問題は何度も解き直す
模試の問題を一度解いてそのまま放置するのはとてももったいないです。
・180分間アウトプットできる問題集が手元にあるため、何度も模試に挑戦できる。
・間違えた問題をじっくり時間かけて解き直すことで、理解度も深まる。
・運が良ければ、その問題が本番で出題される。
そのようなメリットがあるので、模試の問題は全部の問題を暗記してしまうくらいまで、使い切りましょう。
独学の注意点
何事においても言えることではありますが、独学で特に注意すべき点があります。
- 必ず最新版のテキストを使用
→法改正により、過去問の正誤が変わることがあります。 - インターネット情報は信憑性を確認
→1つの情報を鵜呑みにせず、他のサイトと比較しましょう。
その本や情報がいつ発表されたのか更新されたのかなどはしっかり確認しましょう。
ちなみに、物事の根拠を探す作業は、行政書士の実務においても重要なことです。
最後に 強い意志・計画性・実行力を持つ
行政書士試験における独学合格の可能性や勉強方法は以上です。
行政書士試験の独学合格は決して不可能ではありませんが、自分自身の強い意志・計画性・実行力がなくては実現できません。
また、独学だけではなく、行政書士として成功したいなら「意志・計画・実行」はずっと必要なものです。
その一歩目として独学合格は良いハードルだと思います。
以下の記事で、試験の概要や科目別の攻略法などをシリーズで解説しています。
勉強の参考になれば幸いです。
では、「独学以外は気合が足りないのか?」というと、そうではありません。
お金を対価に先生を付けて教えてもらうことは、ゴールに辿り着くまでの有効な手段の一つです。(行政書士業務の実務を有料の講習会で教わるということもあります。)
協力者が欲しい。独学だと少し不安を感じる。という方は、通信講座や予備校の利用も検討してみてください。
以下におすすめ通信講座をまとめました。
興味がある方はぜひ。
皆さんの試験突破を心よりお祈りしています。