前回の記事のまとめです。
- 112/300点を占める最重要科目
- 過去問の知識が生かされる出題傾向
- 条文・最高裁判例の理解が大事
行政書士試験は難関試験ではありますが、初学者でも正しく勉強すれば合格できます。

民法ってなに?
民法の攻略法は?
行政書士試験に出題される民法とその攻略法について解説していきます。
行政書士試験の理解を深め、合格を掴みましょう!
民法とは?

民法は日常生活に身近な法律
民法とは、私人間(国民と国民)の権利・義務に関係する規律を定めた法律です。
つまり、「個人同士の取引や関係」に関するルールが定められています。
そのような法律を総称して私法といい、民法以外には商法なども含まれています。
対して行政法は、国家と国民の権利・義務に関係する規律を定めた法律です。
そのような法律を総称して公法といい、行政法以外には憲法や刑法なども含まれています。
- 物の売り買い(売買契約)
- 金銭の貸し借り(消費貸借契約)
- 土地や家の賃貸借(賃貸借契約)
- 結婚
- 相続 など
日常生活で身近に起こりうる私人間の行為が民法に規定されています。
ちなみに、行政書士業務では契約書の作成や遺言・相続のサポートなどで民法の知識が生かされる場面があるため、しっかり勉強して損はありません。
仮に、行政書士にならなかったとしても、民法の知識があると私人間トラブルが起きた時に少しは役立つかもしれないですね。
契約の概念を押さえよう
契約とは、当事者間の合意で成立するものであり、法的な責任を伴う法律行為です。
簡単に言うと、

これください!
という、Aさんの申込みに対して、

わかりました!
という、Bさん(相手方)の承諾で契約が成立します。
身近な例で言えば、コンビニであなたがレジにお弁当を置いて、店員さんが「〇〇円です」というだけでも売買契約は成立します。
例の解説)レジに商品を置く行為が購入の意思表示であり、値段を答える行為が売却の意思表示となる。
また、売買契約は口頭でも成立する。
日常生活で簡単に起こることでも、契約が守られなければ裁判所に訴えることもできます。逆も然りです。
また、契約が成立すると当事者間で債権・債務が発生します。
特定の人が特定の人に対して、一定の行為を請求できる権利のこと
特定の人が特定の人に対して、一定の行為をする義務のこと
売買契約成立時に発生する債権債務 その①
債権:店員が商品を売るとき「代金の支払いを請求する権利」を有する
債務:あなたが商品を買うとき「代金を支払う義務」を負う
売買契約成立時に発生する債権債務 その①は、代金に関するもので図にすると以下のようになります。

売買契約成立時に発生する債権債務 その②
債権:あなたが商品を買うとき「商品の引渡しを請求する権利」を有する
債務:店員が商品を売るとき「商品を引き渡す義務」を負う
売買契約成立時に発生する債権債務 その②は、商品引渡に関するもので図にすると以下のようになります。

売買契約では「代金」と「商品引渡」について債権債務が同時に発生します。
このとき、店員には商品引渡義務がありますが、あなたの代金支払義務が果たされるまで商品の引渡しをしない。とすることも認められています。(同時履行の抗弁権の例)
このように債権・債務は表裏一体の関係にあるといえます。
民法では契約の概念が頻繁に登場するため、契約について理解しておきましょう。
民法の5つの構成
民法は、5つ分野で構成されています。
- 総則
- 物権
- 債権
- 親族
- 相続
「総則・物権・債権」を財産法、「親族・相続」を家族法といいます。
① 総則
総則は、民法全体の基礎となる部分です。
「通則、人、法人、物、法律行為、期間の計算、時効」に関する条文が含まれており、物権や債権にも共通するルールが定められています。
② 物権
物権は、物(不動産や動産)に対する権利について定めた部分です。
具体的には、占有権・所有権・地上権・地役権・留置権・抵当権などのルールが定められています。
③ 債権
債権は、債権債務や契約などに基づく権利・義務について定めた部分です。
具体的には、債務不履行・弁済・契約・不法行為などのルールが定められています。
④ 親族
親族は、夫婦や親子などの家族関係について定めた部分です。
具体的には、婚姻・離婚・養子・親権などのルールが定められています。
⑤ 相続
相続は、死亡した人の財産や権利・義務の承継について定めた部分です。
具体的には、相続の効力・遺産分割・遺言などのルールが定められています。
行政書士試験における民法と攻略法

民法攻略の心構え
民法は300点満点中76点と行政法に次いで配点が高い科目です。
出題形式 | 問題数 | 配点 | 目標点 |
---|---|---|---|
五肢択一式 | 9問 | 36点 | 28点 |
記述式 | 2問 | 40点 | 20点 |
合計 | 11問 | 76点 | 48点 |
例年、五肢択一式で出題される9問の内訳は、以下のパターンであることが多いです。
財産法
総則:2問
物権:2問
債権:4問
家族法
親族/相続:1問
また、40点という高配点の記述式も財産法から出題する傾向があります。
そのため、まずは財産法から勉強を始めて、家族法は軽めに対策し、目標点は6割を狙っていきましょう。
五肢択一式の出題内容と対策
民法の五肢択一式問題は、条文や判例に基づいて選択肢の正誤判断をさせるという出題方法が多いです。
さらに、「登場人物AがBに〇〇をした場合に△△の請求ができるか」という具体的な事例形式の問題もあるため、事例の流れを理解して判断する力も問われます。
過去問を解いていると、「このときは…、この場合は…、」と事例ごとに様々な分岐があって複雑に感じられることはありますが、全て民法に基づいているわけですから事例や判例に段々と共通点が見えてきます。
そういった共通点や基本的な考え方に加え、条文の原則や例外を覚えていくことで、どの事例問題でも正しい選択肢を選べるようになります。
条文と判例を押さえて、事例の形に落とし込んで理解を深めていきましょう。
記述式の出題内容と対策
民法の記述式問題は、具体的な事例が提示され、その場面に適切な法的判断や根拠を書かせるという出題方法が多いです。
具体的には、条文や判例の文言、民法上の法律用語、また、その事例において行使できる権利や提起できる請求の名称などが書けて、40字程度にまとめる力が問われます。
そもそも条文や判例が理解できていなければ記述することもできないため、勉強開始時期の目安としては五肢択一式が7、8割回答できるくらいのレベルになってから対策し始めるのがおすすめです。
ちなみに、私は記述の過去問を読んでも最初は何を問われているのかすら見当もつきませんでした…。
暗記ではなく理解を深める
行政法と異なり、民法は過去問以外の知識を問われることが多い傾向です。
過去問と似たような問題でも論点が違ったり、過去問と論点は同じでも見たことない条文や判例が問われたり、と問題の幅がかなり広いです。
条文、判例、事例の丸暗記では範囲が広すぎて対応しきれません。
民法のコツは、その条文が存在する意味を理解することです。
条文を読んで「これはどんな人の権利を守るために作られたか」と目的を知り、原則を押さえる。
どんな判例があるか、他の事例ではどうだったか、例外があるのか、と1つの知識から多数の知識に関連付けて整理する。
この作業を繰り返すことで理解が深まっていきます。
民法の過去問対策だけでは限界があるので、行政書士試験対策のテキストにあるようなオリジナル問題に取り組んで、解説を熟読することもおすすめです。
もし、勉強に時間がかけられない場合は、過去問だけでも確実に得点できるように勉強していきましょう。
最後に 民法は理解学習で差がつく
以上、行政書士試験に出題される民法とその攻略法について解説しました。
- 財産法が大部分を占める出題傾向
- 条文や判例以外に事例も重要
- 暗記ではなく条文の理解を深める
民法は丸暗記では到底太刀打ちできない科目です。
条文の原則を押さえて、例外に注意しながら、どんな事例でも適切な判断ができるようにしましょう。
その訓練を積めば、記述式でも得点が期待できるはずです。
コラムを読まれた方が行政書士試験の合格を掴めるよう、どんどん執筆していきます!
以下の記事が続きになります。ご参考になれば幸いです。